2026/04/27 |
松本 動きます |
新加入スタッフ 松本のタコ(他己)紹介と、ついでに世代別コーディネートの巻 |
はあ?
松本 動きます…だと?
そうなんです。
松本が動き始めたんです。
あ、言っとくけど松本というのは、
メンズビギ有楽町店の期待の新人、
松本貴哉のことなのだ。
あ、申し遅れました。
お洒落に迷える昭和男の駆け込み寺、
「昭和男の令和スタイル」主宰の
メンズビギ有楽町店GMです。
今回は商品というよりも
注目の人物に焦点を当ててみた。
さて、昨年9月に華々しくオープンしたメンズビギ初の旗艦店である有楽町店では、常態的に人員不足に悩まされてきた。その間、本社ヘルプや派遣社員で何とか凌いできたのだ。しかも常勤スタッフは、店長の仁田を除けば私を含め全員還暦過ぎという、まるで笑えないコントのような構成である。今の時代、求人募集してもなかなか良い人材が集まらない。嗚呼、やる気のある活きのいい若手社員が欲しいな…。これはスタッフ全員の悲願であった。
あれは冬のセールが一段落した1月中旬頃だった。開店して間もない閑散としたお店に、1人の若い男性のお客様が入ってきた。スタジャンの前に立ち尽くすお客様に、私はそっと声を掛けた。我ながら絶妙のアプローチである。さらに私はメンズビギのスタジャンの歴史やエピソードについて、声に抑制を効かせながら懇切丁寧に話した。我ながら絶妙のトークである。そこで一旦私は話を止め、お客様の反応を伺った。その表情や頷き具合から、かなり興味があるらしいことが分かる。しかし焦ってはいけない。この場面では 、一方的に話してはいけないというプロの勘が働く。ここは逆に質問を繰り出し、会話をしながら信頼関係を築いていくことが先決なのだ。
私は会話の合間にお客様の雰囲気や服装をこっそり観察した。年齢はメンズビギのお客様には珍しい20代後半ぐらいだろうか。若者らしい溌剌さの中にも落ち着きがある。私の質問にもテンポよく応えながら、その内容にも破綻がなく好感がもてる。
ファッションにもコダワリが感じられ、現代風のリラックス感のあるスタイル。その話しぶりからも相当な服好きであることが推察される。その日は全身ブラックで、シェルジャケットにワイドパンツ、そして足元はクラークスのワラビーだ。『おぬし、なかなかできるな』と、私は心の中で呟いた。
それにしてもこんな青年がナゼ?大人ブランドのメンズビギを知っているのだろうか? 私が興味を持ったのはその点だった。そのことを尋ねると、父親から聞いたという。さらに驚いたことに、あのショーケンの名作ドラマ「傷だらけの天使」を視て、カッコいい!と思ったというではないか! もういい。何だか私は急に嬉しくなり、プロ販売員のセオリー度外視で一方的に語り始めた。
そして機は熟した。私は彼が一番気になっていたという中田慎介デザインのスタジャンの試着を勧めたのである。袖を通すなり彼は
「うわぁ、やっぱりこれはイイですね!」
を何度も繰り返し、満面の笑みを浮かべている。決まるパターンだ。『これ、買います!』というコトバを私は今か今かと待っていたが、彼はそっとスタジャンを脱ぎ始め、溌剌とした声で
「ありがとうございました!」
と言ったのである…。
あれ? 私には “後半ちょっと喋り過ぎたかな?” という反省が無きにしもあらずだったが、それよりもあんな清々しい青年がメンズビギに興味を持ってくれたことが嬉しくて堪らなかった。そして私は最後に
「是非、またいつでも見にいらしてください!」
と言ってパンフレットを手渡し、青年を丁寧にお見送りしたのである。その時の私は本当に来て欲しかったのだ。あの濁りのない眩しいぐらいキラキラした目が、とても印象的だったからだ。
その日の夕方だった。本社のブランド責任者S氏から私宛に電話があった。
「GM、今日午前中に若いお客様を接客しませんでしたか?」
と言う。私は身構えた。すぐにあの青年のことだとは思ったが、てっきり “接客がしつこい!” とか、“加齢臭がキツい!” などのクレームが入ったのかと思ったからだ。
「確かに接客したけど、もしかしてクレーム?」
ところがS氏は
「違います!違います! 実はさっき、その人の面接があったんです」
と言うではないか!
「え!? マジで!? 何も言ってなかったけどな」
私が心底驚いたのは言うまでもない。
「GMの熱い接客で、なかなか言い出せないどころか、思わず買っちゃうとこだったらしいですよ」
当たり前だ。渾身の接客だったのだ。
「それで、GMの感触を教えて欲しいんです」
と言うので、私は彼に抱いた印象をありのままに言った。もちろん太鼓判を押したのは言うまでもない。そして後日、再び店長の仁田も加わった2次面接で、彼は見事に採用となったのである。めでたし、めでたし。
そして松本は3月から正社員採用となり、有楽町店のニューフェイスとしてスタッフに加わった。彼は前職のスターバックスを辞め、地元の山形からわざわざ上京して来たのだ。
「ずっとやりたかった洋服屋にならずして、絶対死ねないと思ったんです」
と、目を輝かせながら平然と言うではないか。明るく熱心で真面目、向上心もあるし、礼儀も弁えている。会話もスマートでスタバ仕込のホスピタリティ接客もできる。そして何よりも洋服が大好き。私が若い販売員に一番求めているのは、その洋服への熱きパッションなのだ。まるで40年前の自分を見てるようではないか。(誰にも言われたことはないが…)

ただ本音を言えば、私は彼の目ヂカラが苦手だ。体力温存のためいつもボンヤリしている私だが、あのキラキラした熱のこもった眩しい目で
「GM、スーツについて教えてください」
などと請われると、私も柄にもなくつい説明に熱がこもる。そして店長の仁田からは見透かされたように
「GM、僕の時はあんな熱心に教えてくれなかったじゃないですか!」
とネチネチチクチク言われる始末。
「いやさ、あの眩しい目で迫られるとさ、ああするしかないだろ。オレだって結構体力消耗すんだよな」
しかし日々成長していく彼を、私は孫を見守るお祖父ちゃんのように目を細めて見る。そしてファッションエンゲル係数が異常に高い、彼の都会での一人暮らし生活を慮る。私もあと数年で引退だ。未来のメンズビギを背負っていくのは、仁田と松本の二人なのだ。
遂にメンズビギ有楽町店の役者は揃った。強力な布陣だ。分析・コンプライアンス担当の「N女史」、販売のスペシャリスト「kazue」、ボンヤリ担当の「GM」、そしてこの一筋縄では行かないクセスゴ老メンバー達を、毒のある笑いでまとめるのは店長「仁田」だ。松本にはIT・SNS部長を任命した。もちろん私の苦手分野だということは伏せておいたが…。
早速松本は動き始めた。接客の合い間にショップのインスタはもちろん、コーディネート投稿にも精を出す毎日である。
そして私はふと思いついた。松本が20代で仁田が30代。この際40代、50代はすっ飛ばして私は60代である。こ、これは!世代別コーディネートができるではないか!!
早速やってみよう。今回のお題は、【PENDLETON/ペンドルトン】別注 鹿の子刺繍カーディガン!
どうですか?スゴくないですか?これだけ幅の広い世代が同じアイテムを着ても、違和感がないどころか不思議とサマになるのは、メンズビギの服ならではの懐の深さではないでしょうか!
さて若い松本の加入によって、スタッフの平均年齢が大幅に下がったのではないかと期待し、私は密かに計算してみたのだが…
えっ!ウソ!マジか!
なんと50歳ではないか!!
大して下がってないという事実に腰を抜かしそうになった私だったが、さらに驚いたのはなんと!メンズビギの年齢(創業50周年)と同じだったのである。これは単なる偶然なのだろうか…。何だか運命を感じる今日この頃である。
おわり